建築前に知りたい 軟弱地盤の見分け方
2021.03.18
軟弱地盤に気をつけて!土地選びで地盤を知る4つのポイント
土地選びの際には、地盤を知ることが重要です。軟弱な地盤では、地震や台風、大雨などの自然災害が発生した際、家に甚大な被害をおよぼすリスクがあります。自然災害が発生しなくとも、適切な基礎選定・基礎設計がなされない場合、家が傾く「不同沈下」と呼ばれる現象を引き起こすことにもなります。
ここでは、軟弱地盤や注意が必要な地盤の見分け方について解説します。
軟弱地盤を見分け、適切な対策を 軟弱地盤を見分け、 適切な対策を
地中に水分を含む地盤に注意
河川や海の働きにより形成された
土地
やわらかい粘土や密度の低い砂で構成される軟弱地盤。日本の国土は他国に比べて軟弱地盤が多く、それらは関東や大阪、福岡などの都市部にも広がっています。特に過去に池や沼、湖だった場所、山裾や谷、河川沿い、海岸沿いの低平地を埋め立てて造成された土地は、地中に水分をたくさん含んでいるため、地盤としては弱くなる傾向があります。
都市部には、河川改修などにより、かつて蛇行していた河川の流れを変えることで、水部だった土地が埋め立てられ道路や宅地として利用されたり、川や水路が地下に埋め立てられ暗渠になったものもあります。現存する川、池、沼、湖だけでなく暗渠や、かつての川、池、沼、湖だった場所は特に軟弱地盤の可能性があるため、家を建てる際には地盤をしっかり確認し適切に対策をしましょう。
また、埋め立てられた地下水を多く含む土地、特に緩い砂地盤の場合、地震の際に地盤が液状化する可能性があります。液状化現象により地下水が地上に吹き出す「噴砂」が起こることもあります。
傾斜地の盛土は
軟弱地盤になる可能性あり
傾斜地に家を建てる場合
南向きの山の斜面を切り開き造成された土地は、多くの場合、南側よりも北側のほうが高くなっています。その分、景色や日当りが良く人気もあるのですが、造成方法によっては注意が必要です。斜面(傾斜地)を平坦化し宅地とする造成方法としては、土を盛る「盛土」と、土を切り崩す「切土」があります。また、切土と盛土が混在した異種地盤も存在します。
切土で造成された場合、地表面より深い場所にある地盤となるため、安定していることが多いでしょう。しかし、人工的に土砂を埋め立て盛土された場合は、盛土部分に使用される盛土材料や締め固め次第では不安が残るうえ、その盛土自体の重量により下部の地盤が変形し沈下する可能性があります。1m×1mの広さで比較した場合、約80cmの盛土を行うと、2階建ての建物と同じくらいの重量になるため、土の量が少なくても注意が必要です。敷地内で盛土の厚さが異なるような場合や、異種地盤には、特に警戒するようにしましょう。
軟弱地盤や注意が必要な地盤では、適切な基礎選定・基礎設計がされていない場合、家が傾く不同沈下と呼ばれる現象を引き起こすことにもなります。不同沈下で家が傾くと、外壁にひびが入ったり、窓やドアの開閉が難しくなったりします。家を建てる際には、必ず地盤調査を行い、適切な地盤補強、また、適切な基礎選定・基礎設計を行うようにしましょう。
不同沈下とは?
地盤調査の前にできる
軟弱地盤の見分け方
機械を使って地盤調査を行えば、硬い・やわらかいといったその地盤の締まり具合、あるいは、地盤の偏りがデータとして出てきますが、土地探しの段階において、機械を使わずに地盤を見分ける方法をいくつかご紹介します。
①地名から読み解く
たとえば「水」「田」「谷」「島」など水を連想するような漢字や、「池」「沢」「洲」「潟」など「さんずい」の漢字が含まれる地名は、もともと深い湿地帯だったケースが多いといわれています。現代は下水道の整備によって排水もよくなっているため、必ずしも軟弱地盤とは言えませんが、注意が必要です。
「○○丘」や「○○台」というような地名は、宅地造成後に宅地販売のためにブランド名的に新しく名前をつけられていることも多くあり、以前の地名が隠れてしまっている土地も存在します。また、大阪の「梅田」のように、「埋田」(田んぼを埋めた)という地名を縁起の悪さなどから異なる漢字を当てて「梅田」と改名していることも。
よって地名をそのままの意味で受け取らず、地名の本当の意味を調べることによって、その土地の特性が見えてくる場合もあります。
②地形や土地利用状況から読み解く
一般的に軟弱地盤の可能性が高いのは、「湿地」「後背湿地」「河原」「三角州(デルタ)」「谷底平野」などになります。他の土地に比べて標高が低い場所は、周囲から水が集まりやすいため地盤が弱くなります。
地形が判断できなくても、「水田」として利用している場合は水を集めやすい土地と考えることができます。また、現在の土地利用状況だけでなく、昔どのように土地を利用していたか、不動産屋さんや近隣にお住まいの方などに聞いてみるのもよいでしょう。
③古地図(旧版地形図)や
ハザードマップを調べる
各市区町村で公開されている古地図やハザードマップを参考にしてみるのもひとつの方法です。古地図には旧地名が記されていることもあるので、その場合、①の手法を使うことができます。また、古地図と現在の地図を見比べて、地形の変化を読み解くこともできるかもしれません。
一方ハザードマップでは、洪水・土砂災害・高潮・津波によるリスク情報や、地震で液状化が起こりやすい地域などを調べられます。
④周辺を観察し軟弱地盤の
兆候を見つける
地盤が軟弱であればあるほど、敷地内または隣地や周辺において、さまざまな兆候が表れます。軟弱地盤が原因でなくとも下記のような現象は発生しますが、複数の箇所で見られる場合は、軟弱地盤である可能性も疑った方がよいでしょう。
- 建物の外壁や基礎などに亀裂がある
- 門扉や塀、擁壁などが傾いている、亀裂がある
- コンクリート舗装された地面(犬走り、土間コンクリート)に亀裂や小さい段差がある
- 電柱が傾いている
- 道路が凸凹に波打っている、亀の甲状にヒビが入っている
- マンホールが道路より出っ張って道路と段差がある
- 橋のたもとの道路が急に低くなり段差や補修跡がある
地盤調査と地盤補強
家を建てる土地を選ぶ際には、硬質地盤を選ぶと安全性が高くなります。ただ、軟弱地盤には家が建てられない、というわけでは決してありません。地盤調査を行ったうえで適切な地盤補強(地盤改良工事など)を施せば、リスクを抑えることができます。
「地盤調査」とは、機械を用いた単なる調査ではなく、地形考察や周辺観察等を含め資料を使って、総合的にその土地や地盤を調べることを言います。「地盤補強」とは、地中に杭状の改良体をつくる、もしくは既製の鋼管杭を地面に埋め込むなどして、地盤を改良、補強することです。
一見硬質な地盤に思える場所であっても、どんなリスクが隠れているか分かりません。新たに土地を購入する場合も、建て替えや相続などですでに土地がある場合も、建築予定地がどんな地盤かを把握するために、まずは地盤調査を行うことが重要です。無料で行ってくれる住宅メーカーもあるので、問い合わせてみましょう。
※「地盤調査」と「地盤補強」については、下記の記事を参照ください。
この記事のまとめ
軟弱な地盤に注意
・傾斜地の盛土
は特にリスクが高い
地名や古地図、ハザードマップ、
周辺環境などをチェック
地盤の特徴を把握したうえで、
地盤調査ののち適切な地盤補強を行う
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